■講座レポート
平成26年度 第1回NPOマネジメント講座
そなえあれば憂いなし!NPOのためのリスクマネジメント講座
●講師:上林 佑 氏(弁護士 三島法律事務所)
●日時:2014.8.22 14:00~16:00
NPOには、雇用関係にある職員、サービスを利用する人とその家族、ボランティアや会員など、多様な協力者が存在します。多様な協力者と良い関係を築き、さらに活動を発展させていくために、守らなければならない法律のこと、知っておかなければならないリスクマネジメントについて学びました。
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【リスクマネジメントとは】
経営活動に生じるさまざまな危険を、最少の費用で最小限に抑えようとする管理手法。危機管理。
リスク管理。
→まず、リスクを知り、リスクが現実に起きないように、予防策を立てる。現実化した時の対策をたてる。
【有給スタッフを雇用したらすべきこと】
◎労働基準法による労働条件の明示義務
賃金、労働時間、その他一定の労働条件(週何日、何時から何時まで労働するか など)
を明確にすることが、後の紛争を予防する。
◎就業規則の作成・届出義務
常時10名以上の労働者(パートも含む)を雇用する場合は、『就業規則』を作成する義務がある。
10名以下の場合でも、義務はないが、作成しておいた方がいい。
作成した就業規則は、労働する場内の見やすいところに掲示し、備え付ける必要があり、書面を労働者に交付する必要がある。(実質的に、周知していなければ、規則の効力がないことになる)
また、作成した就業規則は、所轄労基署長へ届け出ることが必要。
◎労使協定
労働基準法上、労使協定を結ばなければならない場面あり。
①36協定
労働時間は、1日8時間、週40時間までとされている。また、休日は1週1日または、4週を通じて4回与えることが原則。それ以上労働させることは原則禁止。
使用者が時間外労働や休日労働をさせる場合には、労働者との間で、労働基準法36条に定める協定を締結しなければならない。
②賃金支払いの5原則
賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない。賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。口座振込にする場合や社内積立等を控除する場合は、協定を結ぶ(届出の必要なし)必要がある。
◎労働者名簿、賃金台帳の作成→事業場ごとに準備。
◎健康診断の実施
年に1回受診させること。費用は事業主負担。
◎労働保険
①雇用保険
1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みのある労働者を雇い入れた場合に加入義務が適用される。
②労災保険
一人でも雇用している場合、加入が義務付けられている。(パート、アルバイトも含む)
保険料は全額事業主負担。
◎社会保険
①健康保険
②厚生年金保健
→常時5名以上雇用している場合、加入が義務付けられている
【有給スタッフとのトラブル事例】
◎時間外手当の請求
対応策:
・労働時間の管理。残業代を支払いたくないのであれば、残業させない
・給与体系を明確にする(残業代を基本給に含めない方が安全)
◎解雇
対応策:
・一度、人を雇用したら、簡単には解雇できないという認識(覚悟)もつ
・勤務態度に問題があるなどの理由があれば、日常的に記録を残し、注意・指導を行い、それも記録に残した上で、改善されない場合に重い処分を検討する
【セクハラ・パワハラ】
◎セクハラとは?
セクシャルハラスメントの略。職場における意に反する性的言動などと定義される
対応策:・就業規則に罰則規定など、「してはいけない」と明記しておく
・誰に相談すべきか明確にしておく
・プライバシーの保護 など
◎パワハラとは?
パワーハラスメントの略。同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為
対応策:
規定の設備(パワハラの禁止、懲戒事由と挙げる等)や万が一パワハラが起きた場合に、迅速に事実関係の調査・対応等がなされるよう体制づくりをする
★基本的に、雇用主には、職場環境を整える義務があるため、ハラスメントを受けた側にも行った側にも責任が生じる。
★セクハラより、パワハラの方が、証明がむずかしい。言葉のやりとりだけで、裁判対象になるとは限らない。「こういったら、パワハラ」と決められない。
◎ボランティアの法的責任
無報酬のボランティアでも、法的責任を負う義務は生じる可能性がある。その場合、NPOも責任を問われる場合がある。実際に、活動中の事故により怪我人や死亡者が出て、損害賠償を請求された事例がある。
対応策:
・ボランティアに対する十分な注意喚起(指導・監督)
・ボランティア活動保険への加入
◎利用者等とのトラブル防止
対応策:
・スタッフ・ボランティアらに対して、注意喚起、作業手順書の作成や研修の実施。
・損害保険等に加入
・契約書(覚書・合意書・念書等)の作成を心がける。書面化しておくことが重要。
【最後に…】
どんな状況においても、何か「起きてしまう」前の「リスク予防策」を立てておくことが重要。また、多少費用をかけてでも、裁判になる前に、専門家(弁護士や社会保険労務士など)に相談した方がいい。
【参加者からの反応】
・パワハラの定義が明確でないことがもどかしい
・ボランティアでも訴えられる可能性があること(とその賠償額)に対する反応が多かった。