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3つの目標、6つの活動/ハワイのNPO支援(3)

 HANO(ハノ Hawaii Alliance Of Nonprofit Organizations)の代表でCEOのリサ・マルヤマさんは「英語を話す人にとっても難しいんだけど見ますか?」と笑いながらHANOの定款とセットになる「細則」をコピーしてくれました。

hano_rule.jpg定款そのものはウェブサイトに掲載されているのを事前に確認してありました。(より正確に言えば、細則もウェブサイトに存在します)

 細則には「団体の名称」から始まって「主たる事務所」「メンバーの区分」「投票の権利」「理事会の権限」など、日本のNPO法人なら定款本体に含まれていそうな決まりが詳細に書かれています。確かに英語を話す人にとっても難しい内容です。

 では「定款」には何が書かれているかと言えば、「HANO's Mission(使命)」「HANO's Goals(目標)」「What We Do(活動)」などです。その定款がウェブサイトでは「About Us(団体紹介)」としてそのまま掲載されています。逆に言えば、「団体紹介」として使えるほどに、定款を分かりやすく工夫しているということになります。非営利団体に関する情報のうち、どの部分を誰に伝えたいのかについて、よく練られている印象です。
http://hano-hawaii.org/newhano/index.php/about-us

 定款の中で、HANOが自らを規定している表現としては、まず「使命(Mission)」があります。かいつまんで言えば、ハワイの非営利団体それぞれが有する力をさまざまな形で結集し、「集団の力」とすることを通じて「ハワイにおける暮らしの向上につなげる」です。

 そのうえで3つの「目標」を設定しています。

①地理的な要因や分野の壁を乗り越えて展開する多様な協働を実現する。
②非営利セクターを反映した政策提言に取り組む。コミュニティーの価値を重視し、人や自然に対する投資を導き出す。
③HANO自体が持続的に活動できるように事業基金を確立し、メンバーがHANOの財政に寄与できるような環境を作る。

 具体的な活動は6分野にわたって定義されています。

①専門家の派遣や講座
 非営利団体がネットワークを作ったり、さまざまな課題を乗り越えるための知識や技術を習得し、アイデアの共有、協働に取り組む。そのためのリーダーの派遣。

②政策提言と公共政策
 HANOは、NPOで決定権限を持つ人たちが非営利に関する情報を探す際に役に立つ組織です。地域のグループのための公共政策を実現するために企画力を提供します。地域のNPOのために常に待機しているというイメージを込めています。

③調査と情報
 HANOはハワイの非営利セクターのための情報センターです。同時にハワイの非営利セクターに関する情報センターでもあります。能力開発のためのコンサルティングを引き受けます。
④コミュニケーション
 HANOはニュースレターや求人情報、イベントカレンダー、会員の更新情報、ハワイの非営利組織に役立つ報告、その他の情報資料を提供します。
⑤高度な人材育成
 職業訓練の幅広いメニューを開発するためにワークショップや他の組織との協働機会を提供します。
⑥商品とサービス
 メンバー限定の一括購買の仕組みを持ち、各団体の時間と経費を節約しましょうと呼び掛けています。NPOを束ねることで商品やサービスを一括購入できるようにしています。どの団体でも必要な会計ソフトや寄付を集めるためのオンラインサービスなどを一括して購入できます。

 マルヤマさんは「HANOのメンバーに対するサービスは、各種トレーニングと多岐にわたるコンサルティングが中心になります。指導にあたる専門家はわれわれが有償でお願いし、NPOには無償で機会を提供することも多いです」と説明しています。

 HANOの場合、情報を提供したり、専門家を派遣するタイプの支援サービスが中心でした。みやぎNPOプラザや仙台市の市民活動サポートセンターのように、事務スペースや共有設備を貸したり、資金力のないNPOに対して期間限定で「インキュベートルーム」を提供するようなサービスはありませんでした。

 「ハワイでもずいぶん前にはそうしたサービスがありましたが、なくなってしまいました」とマルヤマさん。その理由についてマルヤマさんは「経営基盤を強化できるようなトレーニングプログラムが思うように進まないのに、ある時期だけインキュベートルームを利用できても、難しいことが多い」と指摘しています。

 拠点確保を支援するサービスを必要とする団体は常に存在するので、インキュベートルームのようなタイプの支援を一概に否定はできません。ただ、期間限定で場所だけを貸しても、組織基盤が強化できなければ、なかなかうまくいかない。その逆に組織基盤の強化や事業開発、人材育成、資金調達に関する支援が充実すれば、拠点の確保は後からついてくる、というのがハワイにおける中間支援の経験則のようです。

写真はHANOの定款細則。